東京・上野で美術館巡り「ゴッホ展 ー夜のカフェテラスー」【東京都美術館 編(大英博物館 日本美術コレクション展)】

ゴッホ展の予約は午後4時からの予定なので、それまで上野公園周辺の美術館を見学しています。

前回まで見てきた場所

https://setsuyaku-kakumei.com/museum-hopping-in-ueno-tokyo-2

東京都美術館 大英博物館 日本美術コレクション展

今度は東京都美術館で開かれている大英博物館 日本美術コレクション展に行きます。

実は東京都美術館は初めて行くのですが、かなり広い美術館でした。さすが都立なだけあります。

今回はイギリスにある大英博物館に普段展示されている日本美術の里帰り展みたいなものですが、日本の作品なのに、普段は日本で見れないっていうことがなんか不思議な感じにさせてくれます。

イギリスといえば、かつての覇権国。
そのイギリスにある大英博物館は、所蔵品は800万点以上にも及び、古代エジプト、ギリシャ・ローマ、メソポタミア、ヨーロッパ、アジア、アフリカなど、世界各地の歴史や文化に関する資料が集められています。

「大英博物館」という名前からイギリスの歴史を紹介する博物館を想像するかもしれませんが、実際にはその規模ははるかに大きく、展示を見ながら人類の歴史をたどることができる「世界の博物館」といえる場所です。

代表的な展示品には、古代エジプトの文字「ヒエログリフ」を解読する手がかりとなった「ロゼッタ・ストーン」や、古代ギリシャのパルテノン神殿を飾っていた彫刻などがあります。

とにかく規模が大きく、すべてを一度にじっくり見るのは難しいほど。歴史好きや美術好きなら、一日いても飽きない博物館です。

私の死ぬまでに行きたい場所リストにも入っています。

内側にいると自分の良さが中々見えないよね

浮世絵作品が多く、当時のヨーロッパの人の浮世絵への関心の高さがうかがえます。

個人的な見解ですが、浮世絵は木版画、原画を複製できるので、油絵とは異なり1枚ものという感覚は少し薄いです。

しかし、逆に考えると、この複製できるという特徴があったからこそ、浮世絵は多くの人々の手に渡り、やがて海を越えてヨーロッパにまで広がっていったのだと思います。

かつて日本で浮世絵が全盛だったころ、それらは現代のポスターや雑誌のように、庶民にも身近な印刷物でした。

そのため、今の私たちが100円ショップで購入したお茶碗を新聞紙に包むような感覚で、輸出用の陶磁器の包み紙や緩衝材として使われることもあったようです。

1850年代、そうした陶磁器の梱包材の中から『北斎漫画』をフランスの画家フェリックス・ブラックモンが発見し、その芸術性に注目したという説は有名です。

日本では身近な大衆文化の一つだったものが、海を渡ったヨーロッパでは、それまでにない新鮮な美術として価値を見いだされました。そして、その価値に気づいた人々によって多くの作品が収集され、大切に保存されてきました。

やがて浮世絵をはじめとする日本美術はヨーロッパの芸術家たちにも大きな影響を与え、19世紀後半の「ジャポニスム」と呼ばれる大きな流行へとつながっていきます。ゴッホやモネ、ドガ、ロートレックなど、西洋美術を代表する画家たちもその影響を受けました。

なんかこの感じ、どこかデジャブを感じます。
それは現在のマンガやアニメです。

浮世絵も、当時の日本では庶民が気軽に楽しむ身近な大衆文化でした。
しかし海を渡ると、その独特の構図や色彩、表現方法が新鮮なものとして受け止められ、ヨーロッパの芸術家たちに大きな影響を与えました。

そして浮世絵と同じく、かつて日本のアニメは、海外のテレビ局にとって比較的安価に放送できるコンテンツだったため、多くの作品が子ども向け番組として放送されました。それを見て育った世代が、やがてマンガやゲームを含む日本文化へ関心を広げていきます。

マンガやアニメも、日本では長いあいだ身近な娯楽として親しまれてきましたが、一昔前までは子供やオタクの見るようなもの、といった偏見もあったように思います。

それが、海外では日本独自の文化として高く評価され、いまでは世界中に多くのファンを持つようになっています。

日本では当たり前すぎて見過ごしていたものを、海外の人々が別の視点から見つめ、その価値を発見する。
浮世絵から150年以上たった現在も、私たちは似たようなことを繰り返しているのかもしれません。

気になった作品

と偉そうなことは書いたものの、日本美術や浮世絵の知識はほとんどありません。

でも、その良さにも最近気づけてきたので、少しずつ勉強していきたいなと思っています。

特に私が気になった作品を紹介したいと思います。浮世絵の知識はないので、完全に自分の感覚、フィーリングで選んでいます。

※今回の展示会ではほとんどの作品が写真撮影NGだったので、大英博物館のオンラインコレクションより画像を引用させていただいております。
※クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)作品に限ります。

歌川 広重 「名所江戸百景 亀戸梅屋鋪」

(C) The Trustees of the British Museum

歌川広重の作品です。ゴッホが模写したことでも有名です。
花札っぽいなと思ったのですが、花札には描かれていないみたいです。勘違いでした。

大胆に描かれた梅の木と鮮やかな夕日が確かにゴッホが好みそうな感じではあります。

歌川 広重 「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」

(C) The Trustees of the British Museum

この作品もゴッホが模写したことで有名です。

雨を線で表現するのが日本らしい(マンガ表現のよう)傑作です。

鈴木 春信 「雪中相合傘」

(C) The Trustees of the British Museum

黒い着物と白い着物の対比が美しいですね。そして、雪が深々と降る静寂さも感じられます。

作品を解説してくれているサイトには下記のようにありました。

一見無地のように見える男女の着物は、和紙の表面に凹凸を生み出す「空摺(からずり)」という技術で、立体的な柄が入れられています。
また降り積もる雪の厚みの表現には、紙の表面を盛り上げる「きめ出し」という技術も用いられています。
引用:https://store.adachi-hanga.com/products/uk_harunobu003?srsltid=AfmBOooXUegh3Ai1bT5HbDl7qJn2ZKnc4D40v3KU1aXi6jsNRHq8Jl8x

河鍋 暁斎(かわなべ きょうさい) 「鳥獣戯画 鼠曳く瓜に乗る猫」

(C) The Trustees of the British Museum

河鍋暁斎はどうやら動物が大好きで、とりわけ猫が好きなみたいで、しばしば彼の絵に登場します。

しかも、結構可愛く描かれていて、まるで西洋のお伽話の挿絵に描かれていても違和感がないくらいです。

暁斎は幕末から明治時代にかけて活躍した絵師のようですが、現代的な感覚を先取りしていたのでしょうか。

歌川 広重 「名所江戸百景 両国花火」

(C) The Trustees of the British Museum

こちらの絵もかなり有名なものです。

花火といえば、派手に描きたいところですが、夏の終わりのような静かな寂しさを感じます。

そして、当時も花火は人々の関心を寄せたのでしょう。鑑賞する人々の姿が描かれています。

歌川 国芳 「大物浦平家の亡霊」

(C) The Trustees of the British Museum

平家の亡霊が船に乗る源氏の武士たちを襲う様子が描かれています。

海は大しけ、そして源氏たちの慌てた感じが出てていいです。そして何より画面奥の霧のような亡霊の表現が一級品です。

歌川 広重「東海道五拾三次之内 三島 朝霧」

(C) The Trustees of the British Museum

早朝の感じが出ています。

霧が早朝の静けさと肌寒さを表現しています。

歌川広重は表現力抜群ですね。脱帽です。

月岡 芳年「藤原保昌月下弄笛図(ふじわら の やすまさ げっか ろうてき の ず)」

(C) The Trustees of the British Museum

単純にカッコいいです。

絵に描かれている場面は、藤原保昌(平安時代中期の貴族)が月夜に盗賊・袴垂(はかまだれ)に襲われたが、得意の笛を使って撃退したという伝説のようです。ちなみに、『今昔物語集』にもこのエピソードが掲載されているようです。

歌川 広重 「東海道五拾三次之内 蒲原 夜之雪」

(C) The Trustees of the British Museum

歌川広重は静寂を描くのが非常に上手な絵師ですね。

雪国の人ならわかる感覚なのですが、やけに雪が積もっている夜はイヤに静かなものです。
そういう雰囲気をこの絵は醸し出しています。

さらに、白黒の風景に旅人の青や黄色の服装がアクセントカラーとなっていて、画面が引き締まっています。

葛飾 北斎「冨嶽三十六景 駿州江尻」

(C) The Trustees of the British Museum

北斎はあの有名な波の絵でもそうですが、動的なものの表現に長けていますね。

先ほどの歌川広重「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」では、目に見える雨を無数の斜線によって表現していましたが、こちらの北斎は、目には見えない「風」を直接描かず、その影響によって表現しています。

紙や笠が空へ吹き飛ばされ、人々は身体をかがめて強風に耐え、草や木も大きくなびいています。
風そのものは描かれていないのに、画面を見ただけで猛烈な風が吹いていることが伝わってきます。そして、その風向きさえもわかる表現です。

そして面白いのが、手前ではすべてのものが風に翻弄されている一方、遠くの富士山だけは何事もなかったかのように静かに佇んでいることです。

激しく動く人々や自然と、どっしりと動かない富士山。その「動」と「静」の対比も、この作品の大きな魅力だと思います。

歌川 広重 「名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣」

(C) The Trustees of the British Museum

個人的にはかなり衝撃を喰らった絵です。

部屋の中から格子窓越しに外の風景を眺めるという、大胆な構図が印象的な作品。
このような浮世絵独特の構図は、後にモネなどヨーロッパの画家たちにも影響を与えたとされているようです。

窓辺にちょこんと座る猫ちゃんが可愛らしいですが、どこか哀愁も感じます。

この部屋は、吉原の妓楼の二階と考えられているようです。
部屋の主である遊女は接客中なのか姿が見えず、畳には客が持参したものとも考えられる、酉の市土産の熊手型の簪が残されています。

季節は11月の初冬。

窓の外では、酉の市で縁起物の熊手を買い求めた人々が行き交い、遠くには富士山も見えます。
※酉の市とは、11月の酉の日に浅草で行われる、開運招福や商売繁盛を願う江戸時代から続く祭りです。

空は夕暮れに染まり、祭りはいよいよ賑わいを増していく。一方、日が暮れるこれからの時間は、吉原で働く遊女たちにとって仕事が本格的に始まる時間でもあります。

そんな外の賑わいを、猫は格子の内側から静かに眺めています。

もしかすると広重は、この猫にこの部屋で暮らす遊女の姿を重ねたのでしょうか。

外では人々が祭りを楽しみ、好きな場所へ歩いていく。しかし、彼女たちはその賑わいの中へ自由に出ていくことはできない。聞こえてくる祭りの声や、窓の向こうを行き交う人々を、仕事の合間にこうして眺めることもあったのかもしれません。

猫が何を思って外を眺めているのかは分かりません。けれど、その小さな背中を遊女の姿と重ねて見ると、格子窓は単なる窓ではなく、外の世界と彼女のいる世界を隔てる境界のようにも見えてきます。

祭りで賑わう自由な外の世界と、これから夜を迎える吉原の一室。

楽しそうな人々を眺めながら、彼女たちは何を思っていたのでしょうか。

歌川 国芳「相馬の古内裏」

(C) The Trustees of the British Museum

最近平将門さんの首塚が話題となっていますが、この絵も平将門さんに関連する絵です。

この絵は山東京伝『善知鳥安方忠義伝』で書かれている、物語の中で平将門の娘として登場する滝夜叉姫が、妖術を使って骸骨の妖怪を呼び出す場面を描いた作品です。

物語では、朝廷との戦いに敗れた父・平将門の遺志を継ぎ、滝夜叉姫たちは再起を企てます。その拠点となったのが、かつて将門の御所があったとされる、荒れ果てた「相馬の古内裏」です。

その動きを知った源頼信の家臣・大宅光圀がその陰謀を探るためやってきます。
滝夜叉姫は妖術で骸骨を呼び出し、光圀を迎え撃ちます。という場面です。

もともとの物語では、複数の骸骨が現れて合戦をする場面でした。しかし歌川国芳は、それらを一体の巨大な骸骨として描くという大胆なアレンジを加えました。

三枚続の画面いっぱいに巨大な骸骨が迫ってくる構図は圧倒的です。
原作をそのまま絵にするのではなく、「どうすればもっと迫力のある場面になるのか」を考え、巨大な一体の骸骨へと作り変えたところに、国芳の優れた演出力を感じます。

江戸時代の浮世絵に、この演出ができるということに国芳の表現力の高さが窺えます。

ということで、充実した展覧会でした。

次回に続きます。

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